愛だけ綴っていたかった。
愛だけ綴っていたかった。
ごめんなさいの対象はわからないけど口をついて出る。
愛だけ綴っていたかった。
自分の得意分野からも解放されたいという思いがある。
能力主義から解放されたい。
成長主義から解放されたい。
怠惰。
懈怠。
懶惰。
とでも、言われるのだろうか。
とにかく生まれたくなどなかったということ。
休み時間、クラスメイトへの話しかけ方がわからないから
絵を描いていた。
すると、クラスの何人かが机の周りに寄ってきて
「上手いね」
って言ってくれた。
好きな漫画やアニメ、ゲームが共通すれば
その話で盛り上がれる友人も何人かいた。
けれど私は運動神経がめっぽうダメだった。
体育の時間は苦痛でしかなかった。
少しミスをすればクラスメイトに嫌がられた。
チームに自分がいることに罪悪感を覚えた。
できる、できない
この二つに振り回されて嫌な思いをするなんて
誰でも経験のあることだろう。
でも、「誰でも経験がある」ことが
ひとりの苦痛の経験をなかったことにはできない。
能力をほめてもらえれば、それはうれしい。
けど同時に思う。
無条件に生きさせてほしかった。
無条件に自分を愛させてほしかった。
能力がなければ稼げないこの世はなんなんだろう。
稼げなければ生きていけなくなるこの世はなんなんだろう。
能力があってさえ愛してくれない人もいる現実の中で思う。
「絵なんかなくても愛してほしかった。」