絶対等級

詩は日記で日記は詩

天使になれる場所

飛べる場所を見つけてしまった。

 

灯台下暗しというやつだ。

 

こんなに近くに。

 

羽がないけどそれがいい。

 

飛べる場所を見つけたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

幼い頃、藁をあげに行っていた牛たち。

もうとうにそこにはいない子たち。

もう使われていない牛小屋の

扉に手をついてじっとした。

 

 

「どんな気持ちだったの」

 

思わずついて出た言葉

 

 

夜の田舎

 

蛙と鈴虫、風の音

 

牛小屋の前で少し目を瞑って

 

 

 

 

 

飛べる場所を見つけてしまった。

 

もうここには居られないとわかってしまったから

 

梯子の様子を確認しようと

上を向いて歩いてたら

 

いきなりガクンと

片足を重力に掴まれて

引っ張られたと思ったら

 

足が溝にはまっていて、擦りむいていた

 

「ダッサ」と他人事みたいにもらして

 

泥でぐちゃぐちゃになった左足と

擦りむいて血がたれた右足を抱えて

しばらくうずくまった。

 

やるにしても

準備がいる。

 

 

ほんとうは衝動のままに安らかに死ねるべきなんだ。

 

だからいつでも死ねると思える手段がすぐそばにあることは重要で

 

 

私は飛べる場所を見つけたんだよ。

 

失敗するかもってリスクがあっても

 

 

「いつでも死ねる場所があるんだ」

 

それだけで

 

重たかった足は軽く前に進めるようになったし

 

うずめた顔もあげられたの

 

 

かろうじて

ひとまずは

家に帰ってこれたの

 

 

 

ねぇ、「もういいよ」って言って。

あなたなら

「まだだよ」と言って。